起立不耐症(OI)・起立性調節障害(OD)とは

若者に多い循環器自律神経病気です

起立不耐症と起立性調節障害

起立不耐症(OI)・起立性調節障害(OD)とは、何らかの原因により自律神経や中枢神経などに異常が起こり、立った時の血液の循環に様々な問題を引き起こす疾患の総称です。


起立不耐症 きりつふたいしょうOI:Orthostatic Intolerance)

脳神経内科、循環器内科で成人の患者に対して使われている名称

起立性調節障害きりつせいちょうせつしょうがいOD:Orthostatic Dysregulation)

日本の小児科などで若年の患者に対して使われている名称


どちらも起立後の血液循環の異常によって、立ち続けることに耐えられない起立不耐性)という症状が現れる病気の総称で、ほぼ同様の意味で使われています。

主なタイプには上の図のようなものがあります。(その他にもタイプがあります。)
この中の複数のタイプを合併することも少なくありません。

  •  立ちくらみめまい
  •  失神
  •  頭痛
  •  朝の体調不良
  •  倦怠感疲労感
  •  胃腸の不調
  •  思考力の低下

このような症状をお持ちの方は、起立不耐症(OI)・起立性調節障害(OD)かもしれません。

患者さんの傾向

年齢

発症のピークは15才前後だと考えられますが、タイプによっては高齢の方なども含め成人の方も発症します。

男女比

どちらかというと女性に多いと考えられています。

日常生活

起立不耐症(OI)、起立性調節障害(OD)は患者さんの重症度が幅広い病気で、軽症では日常生活にほとんど支障なく過ごすことができますが、重症例では座っている姿勢を維持することすら難しく、中には一日中横になって過ごさなければならない患者さんもいます。

 

若年の起立性調節障害では、患者さんの約50%ほどが登校困難な状態になっているのではないかとも言われています。

症状

タイプにより原因が違うため、人によって症状は様々ですが、高い頻度で出る症状を大きくまとめると下のようになります。

  • 立ちくらみ、めまい、失神など(起立不耐性)
  • 午前中の体調不良、睡眠の異常
  • 頭痛
  • 胃腸の不調、発汗異常など(自律神経症状)
  • 疲労感、倦怠感
  • 思考力、記憶力の低下(ブレインフォグ)

原因としくみ

起立不耐症(OI)、起立性調節障害(OD)というカテゴリーの中でも、立ったときに低血圧になる人もいれば、高血圧になる人もいて、その原因やしくみ(機序)は人によって違います。

原因

発症の原因に関してはまだ不明な点が多いようです。

OI/ODのうちの体位性頻脈症候群(POTたいいせいひんみゃくしょうこうぐんS)では、感染症の後に発症するケースが少なくないと言われています。

また、小児起立性調節障害の起立直後性低血圧(IきりつちょくごせいていけつあつNOH)などは、主に思春期の急激な身体発育による自律神経のアンバランスによって引き起こされるのではないかとも考えられています。

近年では、起立不耐症の一部の患者さんから自律神経の自己抗体が発見されていて、自己免疫の異常(免疫細胞が間違えて自分の身体を攻撃してしまうこと)が原因で起立不耐症を発症するケースもあるという論文が発表されています。

しくみ(機序)

立ち上がった時に血圧を調整するしくみのうち、血圧が下がったことを感知する器官(圧受容器)から中枢神経や自律神経などを通り、心臓や足の筋肉を動かすように指令を受け取る部分(受容体)までのどこかの部分に異常が発生すると起立不耐症になると考えられています。

(タイプによって異常が起きている部分が違います。)

その他には身体の中の血液の量が少ないような状態になってしまう(循環血漿量減少)場合にも起こると言われています。

診断

起立不耐症(OI)、起立性調節障害(OD)は、仰向けで横になりしばらく安静にした後に、立った状態になって血圧と脈拍などを数回測定する検査(起立試験)によって診断されます。

各タイプごとに診断基準の項目や数値が違います。そのため、起立不耐症・起立性調節障害と診断されたときには同時に大まかなタイプも判明します。

また、起立試験にはいくつかの種類と計測方法があります。

治療

タイプによって治療の内容が変わることがありますが、多くの場合、日本ではまずミドドリンなどの血圧を上げる薬(交感神経α1受容体刺激薬)が処方されています。
薬の効果を底上げするためにも、多めの水分、塩分の摂取と適度な運動が推奨されています。

治療後の経過

治療後の経過(予後)は、タイプや患者さんによって様々で、薬を服用することによって改善して日常生活に戻れる人もいれば、薬を飲んでも改善しづらい人もいます。

小児起立性調節障害のうち10代前半発症の起立直後性低血圧 INOHなどでは、思春期が終わる10代後半~20代前半頃には治ると言われています。

逆に起立不耐症・起立性調節障害の中には、成人以降にも症状が継続する患者さんも少なくなく、原因やしくみによって人それぞれ経過が違うと考えられます。